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ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)
(1997/09)
村上 春樹

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感想:★★★★★

実際に生きる私たちにとって、死と殺人は最終選択である。
だから、起こる問題を出来るだけ「生きて」解決しなければならない。

だけど村上春樹の世界の住人は、次々に死んで、次々に病んでしまう。
実際にそんなことが出来たらどれだけ楽だろう。だから、人が死んで悪が死んでそれで物語が終わってしまうのは卑怯だ。
何故なら私たちは、起こる問題を出来るだけ「生きて」解決しなければならないし、実際に「生きて」解決する人々がほとんどだからだ。

だってトオルの守りたかったクミコは罪を犯して刑務所に入っちゃうなんて、クミコを救うべくなんやかんやしてたトオルは何もクミコ救えてないもの。綿谷ノボルの死が最良の解決法だったとは私には思えない。
現実的に考えれば、夫婦なのだから、現実的に解決するべきだし、それが美しい。
でも、村上春樹は上手くいかなかったパターンの物語を書く人だから、彼の作品を読む時に、そういうケチはつけてはいけないのだ…
めでたしめでたしで終われないのが村上春樹であり文学であるかも知れないから、だからこそ、三部を執筆したのだろう。(回収してない伏線があることも含めて。)

夫婦の間には色んな問題が起こり得る。
それは、この夫婦に限らず、どんな夫婦にも起こり得る。
昔から抱えている傷や秘密に、夫婦生活の途中で気付いたりぶつかったりすることも実際に起こり得るし、上手く行っていたように思えていたものが本当は全然上手く行ってなかったなんてことも起こり得る。

ひとりの人間が、他のひとりの人間について十全に理解するというのは果たして可能なことなのだろうか。
つまり、誰かのことを知ろうと長い時間をかけて、真剣に努力をかさねて、その結果我々はその相手の本質にどの程度まで近付くことができるのだろうか。我々は我々がよく知っていると思い込んでいる相手について、本当に何か大事なことを知っているのだろうか。


二部までの時点で、加納クレタが綿谷ノボルに汚されたと言ってたから、クミコが綿谷ノボルに汚されたのだということは明白だった。
その問題から逃げようとしていたトオルが、加納クレタとクレタ島へ逃げようとしていたトオルが、それではいけないと気付いて、もう一度クミコを取り返そうとする。夫婦生活とはそういう繰り返しだから、個人的には二部まではすごく良かった。夫婦のあるべき姿へ向かうまでの現実逃避と葛藤を、井戸というシンプルなメタファーで分かりやすく描いていたと思う。本当に、二部までは感動したし、リアリティーもあった。どんな夫婦でも起こり得るから、共感できる良作だったと思う。

村上春樹自身が「メイキング・オブ・ 『ねじまき鳥クロニクル』 」という文章を発表していて、それによれば、本来は「第一部、第二部で『ねじまき鳥クロニクル』という話は終わるはずだった」そうだ。
また、「第一部と第二部というのはひとつの独立した作品であって、一と二と三をつなぎ合わせたものもまた別の独立した作品だと考えてもいいんじゃないか」と言っているらしい。

私の中のねじまき鳥クロニクルは、二部までである。三部は補足にすぎない。個人的には、そんな読み方が好きです。しかし、勿論三部にも素敵な部分は沢山あるし、重要な描写もある。
納得いかない部分もあるのだけど、何度でも読みたい、素晴らしい作品だと思います。
夫婦は特に、是非読むべきだと思う。
こういうことって、起こり得る。それを、男性側の視点から、とても丁寧に描写されている。
それにしても、村上春樹の物語って、大概大切な身近な女性が居なくなるのは何故だろう…

「よろしいですか、すべての物事は複雑であると同時にとても簡単なのです。それがこの世界を支配する基本的なルールです」
「そのことを忘れてはなりません。複雑に見える物事も――もちろんそれは実際に複雑であるわけなのですが――その動機においてはきわめて単純なのです。それが何を求めているか、それだけのことです。動機というものはいうなれば欲望の根です。大事なのは、その根をたどることです。」


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