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あゝ、荒野 (角川文庫)あゝ、荒野 (角川文庫)
(2009/02/25)
寺山 修司

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感想:★★★★★

私にとっても荒野のようだと思われることは多々ある。誰にでもあるはずだ。
それこそ本書で語られるような広いシーツだったりとか、ネオンの煌く街中であったりとか、近くには、横には、誰かしら居るんだけど、すごく遠い。そういった所に一人ぼっち。それが荒野。つまり、

「おまえの時代」というものなどは存在しない。ただ「おれの時代」を奪いあうエネルギーだけがほんものなのだ。


誰だって「おれの時代」のことには熱中しているが「おまえの時代」のことまでは手がまわらねえ。(中略)「おまえの時代」なんてのにありつくのはまるでお月さんへ梯子をかけるような話だよ。


―というように、みんな自分のことで精一杯だし、自分の時代を作ることに必死だからだ。

本書では、あらゆる人々が登場する。

私が寺山に猛烈に惹かれるのは、寺山の描く女には憐憫の情を抱きたくなるような女が多いことも理由の一つとして存在している。そういう風にしか生きられないことが滲み出ていて寂寥感のある女。
で、何故憐憫の情が沸き起こるのかというと、その痛々しい様に自分を投影してしまうからだろう。
(自分に同情するなというノルウェイの森を思い出すけれど)

――男の人と、あれをするときは、まるで地震のよう。
だけど、男の人の心の中には、役場の戸籍係の机ぐらいの「かくれ場」なんかないのです。
あたしは一体、どこにかくれたらいゝの?


私はこういう気持ち分かるし、こういう気持ちが分かる女子はきっと多いから、男である寺山がこういうこといくらでも書けちゃうことについて、純粋に詠嘆し、寺山修司は分かってくれる、みたいな慰撫を女子に与えていて、それ故に彼には女性のファンが多かったりするんじゃないかななんて思います。
少なくとも私は、寺山に対してそういう気持ちがあることは間違いないので、もし彼が生きていたら、もっともっと熱烈に、好きだったかも知れません。今でも、何で彼は生きていないんだと涙が出るほどに逢いたい存在なんですけれど…

「とうとう退治したわ」
と芳子がきれぎれの声で言う。「とてもこわかったわ。でも、退治しちゃったから、あれはもう来ない」
「あれ?」
「鬼よ。いつも男の人と寝るときやって来るの。そしてあたしが夢中になってるとき嗤って逃げていくの」


うーん、うーーーん、なんでこんなこと、男の人に書けちゃうんだろう…と、唸るばかりです。
セックスシーンの描写も凄い。臨場感と切なさの溢れる心と身体のやり取りに、もう私は屈服するしかありません。初めて読んだ時は殆ど泣きそうになりました。セックスシーンなのに。
寺山修司にはやっぱりロマンがある、と思います。

その他にも、唸るようなエピソードや唸るようなセリフがぎっしり詰まっていて、まさに寺山にしか書けない小説。もっともっと小説を遺して欲しかった。

老人に必要なのは、諦めではなくて、もっとひどい絶望か、あるいは偽りの希望かの、どっちかなのだ。


「どこの老人ホームへ行っても、老人たちは口ぐせに<もっと生きたい>って言うのよ。皆、毎日が不満だから、もう少し生きて、もっといい思いをしてからじゃないと死ねないって言うのよ。
つまり、欲求不満のエネルギーがあのひとたちの生甲斐になってる訳なのよ」


――あなたは病気にかかっていませんか?人類が最後にかかる、一番重い病気は「希望」という病気です。


歌舞伎町を舞台に、色んな職業の人間が混ざり合っているのに、どれも孤独なのだ。
<バリカン>や宮木には寺山のコンプレックスを感じさせる。
リングの上の荒野で<バリカン>は最後の戦いに挑む。

やっぱり、寺山にはロマンを感じるなぁ。
大好きな小説です。



2011/10/31 15:50 追記

今回嵐の松本潤さん主演で舞台化されるとのこと。
その件でこのブログに辿り着く方が多いみたいで、その影響力に驚愕しています。
私も、大好きな寺山原作の舞台ですから、一度は観に行く予定です。

松本潤くんや小出恵介くん目当てで観に行く人に豆知識。
新宿新次(松本くん)は「寺山修司の理想像」、バリカン(小出くん)は「現実の寺山修司」です。(だと私は思って読んでいます。)
ボクシングは寺山が愛好していた競技。ボクシングという競技自体が「自分との戦い」ではありますが、この作品では寺山が自らと自らを戦わせている作品なのです。(と私は思ってます。その2。)
寺山は青森出身で訛りがあること、身体が弱いこと、いじめられっこだったことに強いコンプレックスを抱いていたので、それを打ちのめす理想像の新宿新次を生み出したのですね。
そんな寺山の心があゝ、荒野。(と、うまくまとめようとしてみる。)

なんにせよ舞台が楽しみです。
この機会にジャニーズファンの人たちが寺山文学の良さに少しでも触れて下さればとても嬉しい気持ちです。

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