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「それ以来地下鉄に乗るのが怖いとか、そういうのはありません。嫌な夢も見ません。あるいは私が無とんちゃくだからなのかもしれませんがね。しかし運命というのはたしかに感じます。たとえば私は普段、三両目のいちばん前の扉からは乗らないんです。常に二番目の扉から乗るんです。そしたら私はたぶんサリンの風下に座っていたでしょう。でもその日だけはたまたまいちばん前の扉から乗った。とくに理由もないんです。たまたまというだけのことです。」
『アンダーグラウンド』 p.179 被害者:稲川宗一
「もともと持って生まれた才能とか、家柄とか、頭のいい人間はどう転んでも頭がいいし、足の速い人間はどう転んでも足が速いとか。それで弱者と呼ばれる人たちはどこまで行っても日の目を見ないんだと。そういう運命的なものってありますよね。それじゃあまりにも不公平じゃないかと、僕は思っていたんです。 」
『約束された場所で』 p.181 元オウム真理教信者:細井真一
なぜこのような悲惨な事態がもたらされたのか、その原因はほぼ明らかです。原子力発電所を建設した人々が、これほど大きな津波の到来を想定していなかったためです。何人かの専門家は、かつて同じ規模の大津波がこの地方を襲ったことを指摘し、安全基準の見直しを求めていたのですが、電力会社はそれを真剣には取り上げなかった。なぜなら、何百年かに一度あるかないかという大津波のために、大金を投資するのは、営利企業の歓迎するところではなかったからです。
また原子力発電所の安全対策を厳しく管理するべき政府も、原子力政策を推し進めるために、その安全基準のレベルを下げていた節が見受けられます。
我々はそのような事情を調査し、もし過ちがあったなら、明らかにしなくてはなりません。その過ちのために、少なくとも十万を超える数の人々が、土地を捨て、生活を変えることを余儀なくされたのです。我々は腹を立てなくてはならない。当然のことです。
しかしそれと同時に我々は、そのような歪んだ構造の存在をこれまで許してきた、あるいは黙認してきた我々自身をも、糾弾しなくてはならないでしょう。
広島にある原爆死没者慰霊碑にはこのような言葉が刻まれています。
「安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませんから」
素晴らしい言葉です。我々は被害者であると同時に、加害者でもある。そこにはそういう意味がこめられています。核という圧倒的な力の前では、我々は誰しも被害者であり、また加害者でもあるのです。その力の脅威にさらされているという点においては、我々はすべて被害者でありますし、その力を引き出したという点においては、またその力の行使を防げなかったという点においては、我々はすべて加害者でもあります。
原子力発電を推進する人々の主張した「現実を見なさい」という現実とは、実は現実でもなんでもなく、ただの表面的な「便宜」に過ぎなかった。それを彼らは「現実」という言葉に置き換え、論理をすり替えていたのです。
それは日本が長年にわたって誇ってきた「技術力」神話の崩壊であると同時に、そのような「すり替え」を許してきた、我々日本人の倫理と規範の敗北でもありました。我々は電力会社を非難し、政府を非難します。それは当然のことであり、必要なことです。しかし同時に、我々は自らをも告発しなくてはなりません。我々は被害者であると同時に、加害者でもあるのです。そのことを厳しく見つめなおさなくてはなりません。そうしないことには、またどこかで同じ失敗が繰り返されるでしょう。
(中略)
「安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませんから」
我々はもう一度その言葉を心に刻まなくてはなりません。
我々日本人は核に対する「ノー」を叫び続けるべきだった。それが僕の意見です。
たとえ世界中が「原子力ほど効率の良いエネルギーはない。それを使わない日本人は馬鹿だ」とあざ笑ったとしても、我々は原爆体験によって植え付けられた、核に対するアレルギーを、妥協することなく持ち続けるべきだった。核を使わないエネルギーの開発を、日本の戦後の歩みの、中心命題に据えるべきだったのです。
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「あなたは待っているのが嫌だから、能動的に自分から仕掛けていきたいんでしょう」
「詩の言葉一つひとつを、私たち役者を使って立体的に人に見せていきたいと思っているんでしょう」という私に、彼は「その通りです。あなたは恐ろしい人だ」といい、「そうよ、見かけの通りよ」と私は答えました。(p.17)
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